日を追うごとにスイング動作を解析するツールというのは進化していきます。

鏡しかなかった時代から、ビデオ撮影ができるようになっただけでも非常に大きな変化ですし、さらにそれがスローで見られるようになり、線が引けたりプロの動画と比較して見られたり。。。

そして近年では体にペタペタと装置を貼り付けて、どこの関節がどのタイミングでどのように運動したかが分かるようになりました。

筋電図を取りながらスイングをすることで、どのタイミングで何筋が出力したかということも分かるようになりました。

足の圧力を図ることで体重移動が可視化?しました。(※これについてはかなり疑問です)

これらのツールの進化はとても便利で、誰も反論することのできないデータを蓄積することができます。

しかし、私はこの統計データを活かせるかどうかがもっと大切で、そこに指導者としてのセンスや発想の柔軟性が問われるのではないかと考えています。

大抵のこういったツールが整った場所に行ってスイング解析を行うと、プロの「平均的なスイング動作」と、自身のスイングを細部にわたって比較してくれます。

そして返ってくるのは、「このタイミングでもっとここがこうなってるとプロの平均的なスイングに近いものになる」という結果の部分です。

それがどれだけ細部にわたって、関節の角度が何度違うというものが分かったとしても、「で、どうしたらそうなるの?」という部分を明確にできるかどうか。

そこがまだまだなのではないかと思います。

「最新のツールがすべて整った設備」を売りにすることは設備投資をすれば簡単ですが、求められているのはそこで得た結果に対して、そのギャップを埋めるアプローチの仕方を明確に提示できるかどうかです。

さらに私が問題視しているのは、そのデータに蓄積されているのは「プロの平均的なスイング動作」であって、すべての選手がそのスイングから逸脱した中でナイスショットを打っているのが事実だということです。

ゴルフという競技は、「帳尻を合わせる」ことがゴールだからです。

つまり「プロの平均的なスイング動作」に近づける練習をしても、個性を相殺する動作を入れて帳尻を合わせることをしなければ、スイングの完成ではないのです。

X+Y+Z=0

の解を求める時、

Xが1、Yが2なら、Zは−3でなければなりません。

この−3が気になって−3を0にするようにスイング改善をするなら、同時にYを−1にするのか、XもYも0にしなければなりません。

目に見える動作の問題を解決したいときに、実は違う箇所の改善をしなければならないということに気がつけるかどうかなのです。

ツールの進化には大賛成ですが、それと同時にもっとツールを使う側のセンスが磨かれなければならないと、自戒を込めて書いておきます。



縦書き文書.001
書籍版ゴルフスイング物理学